姉ちゃん、姉ちゃん

夢に弟が出て来たそうだ。
夢とはいえ久しぶりに会えた嬉しさもあったが、出征して一度も連絡のない弟に腹が立ったと言っていた。


なんやの手紙の一つも寄越さんと!心配するやろう!
と弟に詰め寄ると、弟は気弱そうに笑って、
ごめんなあ。姉ちゃん、ごめんなあ。
と言ってしきりに謝っていたそうだ。



その日の昼頃に弟の戦死を知らせる電報が届いた。
戦況の悪化する中、弟は戦火の最前線に送り込まれて家族に手紙を書く暇もなく亡くなったということを、祖母は後から知った。