イデアマスター

通りすがりに見かけて、えらい青い本だなと思ってなんとなく立ち止まってよく見たら若木未生の本だった。
タイトルに見覚えはなかったが脇に記された文字を読んで驚いた。『GLASS HEART』。
しかし驚いたものの即買うという気は起きなかった。
と言うのも、帯に「シリーズついに完結」とあり、もうずっと前に買うのをやめた本なので直前の話がわからなかったからだ。
ところが確認してみると既刊はすべて読んでいた。LOVE WAYからもう6年、まだ6年しか経っていなかった。私が若木さんの新刊を読むことはもうないと思ってからまだ6年しか経っていなかった。




見つけたその日に買わなかったことを後悔している。
夜にブログを回ってネタバレを読んでしまったからだ。
ブログ主さんはちゃんと「ネタバレです」って書いてくれてたのに、読んで私は勝手にショックを受けた。
ネタバレと言ってもその部分は文字数にしたら僅かなもので、内容も重大なものではなかった。
それにショックを受けたということは私はまだ若木さんに思いを残したままだということで、これはどうにも読むしかないと観念した。だから読んだ。

イデアマスター―GLASS HEART (バーズノベルス)

イデアマスター―GLASS HEART (バーズノベルス)

それにしても長い年月が過ぎたと思う。
あとがきにもあったが、一番初めの物語が世に出たのが20年前になるらしい。
私がリアルタイムで読み始めたのはa piece of introductionからで、それからだって16年経っている。
みんなよく待ったなと思った。
あとがきでわりとぶっちゃけたことが書かれていて、こういう変則的な刊行になって申し訳ないとかそういうことのほかに部数の話が出ていた。「ぶっちゃけ売れない」本だったと。
あ、今更ですがあとがきと言えどネタバレになってしまって気に障った方いらしたらすみません。でも現物読む前にこんな画像貼ってあるブログを見るほうが悪いのでやっぱり謝るのよします。狢どうし仲良くしても仕方ないですよね。
といういやらしい言い方がいかにも若木未生を読んだ後だって丸バレみたいで恥ずかしい。
リアルタイムで読んでいた頃書いていた文章を読み返したらもう若木若木していて、えずく勢いで恥ずかしい。
部数ってまた生々しい言葉があっさり書いてあったけど、これを読む人でヤダそんなオトナの事情なんて知りたくなかった!とか若木さんがそんなことゆうなんてショック!等の感想を持つ人はいないだろう。そういう年月が私たちにも過ぎたのだ。


ネタバレのブログに辿り着くまでに、いくつかの感想を読んだ。
「読んで良かった」という感想ばかりだった。
青春時代に読み始め、現在の環境はまるで違うものになったけれど、好きな物を見つけられた喜びは変わらないらしかった。
だから青春時代によりによって若木未生、他に娯楽はいくらもあるだろうによりによって若木未生に足を取られた人間は四の五の言わずに読めばいい。テン・ブランクというイデアを見届けるために、始まりに立ち合うために。