山の口にある、うちの畑の夏野菜がとても順調に育っているらしい。
らしい、と言うのは、その畑を作っている人たちと面識がないからだ。彼らは中国人で数年前から日本へ働きに来ているのだが、毎日勤務先の工場と寮との往復で鬱々としていたらしい。ふと工場の隣を見れば、何も作っていない放置された畑……
「遊ばせてんなら俺らに野菜作らせろォォ!!」
彼らはもともと地方の農民だった。
相談を受けた工場主がうちを訪ねてきて、こういうわけだから貸してもらえないかと言ったとき、母は即座に了承した。それわかる!と思ったからだそうだ。毎日の仕事に疲れたから畑を作りたいという心理は、母にとても馴染みのある感覚だった。畑を見に行ったことはないが、近くを通りがかった母の友人が、野菜をすごく上手育ててるから一度見に行ってみなよととても褒めていた。